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大人の発達障害診断:30歳で気づいた私の特性と向き合い方

こんにちは、Ericaです。

私が2年前に「発達障害」の診断を受けた時のことを、少しだけお話しさせてください。

それは、長年抱えてきた「言葉にできない生きづらさ」の正体に、ようやく光が当たった瞬間でした。うつ病の治療を続け、少しずつ心は回復しているはずなのに、どうしても消えない根本的な違和感。「なぜ、みんなが当たり前にできることが、私にはこんなに難しいんだろう?」と、自分を責め続けていた日々に、ひとつの答えが示されたのです。

この診断は、決して終わりではありませんでした。むしろ、本当の意味で自分を理解し、人生を再スタートさせるための「自分だけの取扱説明書」を手に入れることだったと、今ならはっきりと分かります。

この体験談が、かつての私と同じように悩んでいる誰かの心を、少しでも軽くできたらと思いながら、私の物語を綴ります。

診断前の「なぜかうまくいかない」日々 - 私が感じていた違和感

うつ病の波が少し穏やかになっても、私の日常には常に「なぜかうまくいかない」という感覚がつきまとっていました。特に、仕事や人との関わりの中で、その違和感は色濃く現れました。

仕事でのエピソード

  • マルチタスクができない:複数のタスクを頼まれると頭が真っ白になり、何から手をつけていいか分からず固まってしまう。
  • 会議が聞き取れない:話の内容をリアルタイムで理解し、議事録にまとめるのが極端に苦手。後で録音を聞き直して、人の3倍以上の時間がかかっていました。
  • エネルギー切れ:同僚との何気ない雑談だけで1日のエネルギーをほとんど使い果たし、家に帰ると泥のように眠ってしまう。

プライベートでのエピソード

  • 片付けられない部屋:散らかった部屋を見て「片付けなきゃ」と思っても、どこから始めればいいか分からず、ただただ圧倒されて動けなくなる。これは「だらしなさ」ではなく、一種のパニック状態だったのです。
  • スーパーが苦手:たくさんの商品、照明、人の声…情報量の多い場所に行くとひどく疲れ、ぐったりしてしまう。(後から、これは感覚過敏の特性だと知りました)
  • 「普通」という言葉のナイフ:「普通はこうだよね」という悪気のない言葉に、なぜか深く傷つき、何日も引きずってしまう。

ずっと、「私の努力が足りないからだ」「もっとしっかりしなきゃ」と自分に鞭を打つばかり。そんな時、うつ病の診察で主治医にこれらの悩みをぽつりぽつりと話したところ、「一度、心理検査を受けてみますか?」と思いがけない提案をされたのです。それが、私と「発達障害」という言葉が繋がった、最初のきっかけでした。

診断までの道のり

「検査を受ける」と決めてからも、実際に診断が確定するまでは、不安と少しの希望が入り混じった複雑な道のりでした。

  • 病院探し:まず、「大人の発達障害」を専門に診てくれる病院を探すのが一苦労でした。予約は数ヶ月先まで埋まっていることも多く、根気強く電話をかけ続けたのを覚えています。
  • 初診:とても緊張しながら診察室に入ると、先生は私の話をじっくりと聞いてくれました。子供の頃の性格や、学校での成績、友人関係など、これまでの人生を丁寧に振り返る作業でした。持参した子供の頃の通知表や母子手帳が、自分では忘れていた特性を伝えるのにとても役立ちました。
  • 心理検査(WAIS-IV):後日、臨床心理士さんと1対1で行う知能検査を受けました。難しい言葉で説明されましたが、受けてみた感想は「脳の得意なことと、苦手なことの差を見るための、パズルのようなテスト」という感じ。集中力が必要で少し疲れましたが、自分を客観的に知るための貴重な時間でした。
  • 診断確定:初診から約2ヶ月後、すべての検査結果が出揃い、再び診察室へ。先生から「ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)の傾向が複合的に見られますね」と告げられました。
  • 費用:一連の検査と診察はすべて保険適用でしたが、トータルで2万円ほどの自己負担でした。決して安くはありませんでしたが、長年の悩みの答えを知るための投資だったと思っています。

診断後の心の変化 - 「私のせいじゃなかったんだ」

診断名を聞いた瞬間、涙がこぼれました。それは悲しみの涙ではなく、「やっぱりそうだったんだ」という安堵の涙でした。

「努力が足りないせいでも、性格が悪いせいでもなかったんだ」

初めて、心の底から自分を許すことができた瞬間でした。

診断後は、世界の見え方が少しずつ変わっていきました。これまで「できない自分」を責めていた場面で、「これは私の特性だから、工夫で乗り越えよう」と考えられるようになったのです。

信頼できるパートナーや上司には、診断について正直に話しました。「できないこと」をただ伝えるのではなく、「こういう特性があるので、こんな風に工夫したいです」「こういう配慮をしてもらえると、とても助かります」と、ポジティブな形で伝えることを心がけました。すると、彼らは私の「トリセツ」を理解しようと努めてくれ、人間関係や仕事のストレスが驚くほど軽くなっていったのです。

私らしい向き合い方の実践

診断から2年。試行錯誤を繰り返しながら、私なりに自分の特性と穏やかに付き合う方法を見つけてきました。その中心にあるのが、うつ病の回復期に出会ったマインドフルネスと認知行動療法の考え方です。

  • マインドフルネスで感情を観察する:感情の波が激しく、一度ネガティブな気持ちに囚われると抜け出せなくなることがありました。そんな時は、マインドフルネス瞑想で自分の感情を少し離れた場所から「ああ、今、私は怒っているな」と観察する練習をしています。感情に飲み込まれず、思考の連鎖を断ち切る助けになっています。
  • 認知行動療法で思考のクセを修正する:ミスをすると「もう全部ダメだ!」と完璧主義的な思考に陥りがちでした。認知行動療法の考え方を学び、「確かにこの部分はうまくいかなかった。でも、ここまで準備できたことは事実だ」と、事実と解釈を分けて考える練習を重ねることで、自己肯定感を少しずつ育てています。

そして、日々の暮らしでは、ノイズキャンセリングイヤホンで感覚過敏を守ったり、タスク管理アプリでやるべきことを見える化したりと、便利なツールにもたくさん助けられています。

おわりに - あなたは、あなたのままで素晴らしい

もし、この記事を読んでくださっているあなたが、過去の私のように、理由のわからない生きづらさを抱えているとしたら。

伝えたいのは、診断はゴールではなく、自分らしく、より楽に生きていくためのスタート地点だということです。そして、あなたは一人ではありません。

自分を理解するための一歩を踏み出すことは、とても勇気がいることだと思います。でも、その先には、きっと今より少しだけ、自分に優しくなれる未来が待っているはずです。

あなたのことを、心から応援しています。